第五話:マコトの想い

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「いただきます」 手を合わせて微笑んだ彼女がスプーンを手に取り、スープを口にした。 味わうように一口目を飲み干したあと、再びスプーンですくって二口目を運ぶ。 美味しい、と囁いた感想は、グルメ番組の大袈裟なリアクションとは違って本当にそう思っていることが分かる。 僕も真似をするようにスープに口をつけた。 「今日も美味しいですね」 「はい」 彼女と一緒に食事をすると、同じものを一人で口にした何倍も美味しく感じられる。 それは食事に限ったことではない。 「あ、始まりましたよ!」 こうして彼女と過ごす初めてのイベントは、ドキドキと高鳴る鼓動を止められそうにない。 花火に目を奪われている彼女に、僕は目を奪われる。 花火が打ち上がる度に大きく目を開き、その瞳の中に焼き付けようとして見えた。
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