第五話:マコトの想い

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そんな彼女を見て思う。 ――百合音さんは僕のことをどう思っているんだろう? 少なくとも嫌われてはいないはずだ。 こうして花火にも付き合ってくれているし、僕の発言に顔を赤らめることもある。 「百合音さん」 花火が終盤に差し掛かった頃、聞こえるか聞こえないかくらいの大きさで彼女の名前を呟いた。 緊張して腹に力が入らなかったからだ。 しかし、彼女はその声をキャッチしていたようで、「はい?」と花火から僕に視線を移して小首を傾げた。 バクン、と一際大きく胸が跳ねる。 「……僕と、付き合ってください」 意味を理解するのに時間が掛かったのか、彼女はしばらく瞬きを繰り返したあと、大きく目を見開いた。 僕の鼓動に合わせるかのように、花火が激しく打ち上がる。 「好きです。百合音さんが好きなんです」 生まれて初めての告白は、情けないことに声がかすれてしまった。
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