第一話:彼の秘密

15/27
前へ
/195ページ
次へ
彼のとんでもない環境を知ったところで、「本業は違うんですけど」と呟いた彼女に名刺から顔を上げた。 「あの……さ、佐久間さん?」 「冴子(サエコ)で構いません。あなたはどうお呼びすれば?」 にこりと上品に微笑んだ冴子さんに、自己紹介がまだだったと姿勢を正す。 「私は高月百合音と言います。百合でいいです」 「百合さん。どうぞよろしく」 スッと差し出されたキレイな手を、私は自分の服で手を擦ってから握り返した。 一通り自己紹介が済んだところで、冴子さんが椅子を勧めたためおずおずと腰を降ろす。 すると、白いクロスの掛かったテーブルにノートパソコンを置いた冴子さんがキーボードを叩きながら話し始めた。 「まずは副社長の説明をしますね」 「え?あ、はい」 紹介じゃなくて説明と言ったところに疑問を持ったけれど、パソコンに表示された彼の写真に気は移る。
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!

374人が本棚に入れています
本棚に追加