第六話:闇のココロ

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短いとも長いとも取れる時間が過ぎ、シンの唇が離れて初めて呼吸を止めていたことに気が付き、慌てて酸素を吸い込む。 慌て過ぎてむせてしまった私を、シンが肩を揺らして笑った。 「……笑わないでよ」 「俺はキスじゃなくて人工呼吸をしていたのか、と思ったからな」 シンの口から紡ぎ出されたキスという単語に顔がカァッと赤くなる。 「な、何でキスしたの?」 「百合が好きだから」 「――ッ」 ストレートな告白は本当に矢を打たれたように胸がズキンとして、そこからじわりと熱いものが染み出していく感じがした。 掴まれたままの両手首がジンジンと痛み出していることよりも、もう一度顔を寄せてきたシンから逃れることに必死になった。 「避けるな」 「よ、避けるに決まってるでしょ!」 「俺はお前が好きでお前も俺が好き。意見が合致しているなら何も問題はないだろ」
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