第六話:闇のココロ

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「もし俺とマコト、どちらかしかこの体に残れないとしたら?」 「……え」 天国から地獄に落とされるとはこのことだろう。 幸せな気分をぶち壊すようなシンの問いだけれど、二人に付き合うと決めた私には避けられない問題なのかもしれない。 けれど、心は素直で……。 「俺が消えたら嫌か?」 ボロボロと溢れてしまった涙をシンの親指が優しく拭ってくれる。 それでも「嫌だ」と答えられない私は、ただ唇をぎゅっと噛みしめて耐えるだけ。 シンが消えてしまうのが嫌だと答えてしまえば、マコトさんを見捨てる選択をしたことになりそうで答えられない。 「百合は優し過ぎる……前にも言っただろう?他人のことばかり優先するな、と」 私を叱るような言葉なのに、声色も頬を撫でる指先も優しくて、このまま身を任せて甘えてしまいたくなる。 そんな私をシンは掻き抱いた。
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