第六話:闇のココロ

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息も出来ない程に強く抱かれ、シンはもしかしたら私以上に自分が消えてしまうかもしれないことを恐れているのではないかと感じた。 「……シン」 「まだ触れるなよ?怖くても絶対に触れるな」 私に念を押したシンの顔がすぐそこに迫り、訪れたのは激しいキスの嵐だった。 されるがままにフラフラともつれ込んだ先は、副社長室に置かれた皮張りのソファーの上。 押し倒された私は再び両手首をシンに封じられ、甘いキスを受け入れた。 「……っ」 唇から首筋へキスが移動し、我慢していた息が口から漏れ、身体がビクンと跳ねる。 恥ずかしい気持ちと幸せな気持ちと共に、このままシンに抱かれてしまいたいと思うのに、なぜか涙が溢れてしまった。 「……百合」 「ごめん……怖いとかそんなんじゃないの」 シンに抱かれるのが怖い訳じゃない。 ただ、シンの中に見えるマコトさんへの罪悪感がどうしても顔を出してしまうのだ。
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