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私が触ったせいもあるのだろうけど、シンはしばらく私の腕の中で気を失なっていた。
たぶん目が覚めた時にはマコトさんに代わっているだろう。
「冴子さん……邪魔してすみませんでした」
「いいえ、好きな人があんなに苦しんでいたら止めたくなる気持ちも分かりますから。それに……たぶんですが、シンは消していた記憶を思い出したと思いますし」
「消していた記憶?」
「はい。百合さんにはお話しておいた方がいいでしょうね」
シンが消していた記憶。
冴子さんから聞いた内容は壮絶なものだった。
宝来真が高校生の頃、まだマコトさんとシンに分裂する前。
社長夫人である宝来真の母は、将来トレジャーランドの社長に、長男である宝来慎一(ホウライシンイチ)ではなく次男の宝来真に就任させたがっていた。
いわゆる次男を“溺愛”していたのだそうだ。
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