第六話:闇のココロ

29/31
前へ
/195ページ
次へ
なぜか母の愛情を受けられない長男の慎一は、何かと次男の真に辛く当たっていたそうで、その辺りから宝来真はストレスを溜め込む体質になってしまったらしい。 そんなある日事件が起きた。 いつものように母の愛情を独り占めしている真に、慎一が手を上げた。 普段なら母親の見ていないところでしていた暴力を、その日はたまたま見られてしまったのだ。 『いやっ!真ちゃん!』 真に駆け寄った母親が慎一に殴られ、腫れてしまった真の腹部を撫でた。 『お……俺は悪くない』 顔を真っ青にした慎一が口を開くと、母親はふらりと立ち上がり不気味に笑った。 『そうね……慎一は悪くないわ。悪いのは私』 『母さん?』 『もっと早く慎一を消してしまえば良かったのよね……だって私の息子は真ちゃんだけだもの』 恐ろしい言葉を発しながらフラフラと近付いて来る母親に恐怖を感じた慎一が後ずさりをすると、そこはもう階段で声を発する間もなく落ちたのだそうだ。
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!

374人が本棚に入れています
本棚に追加