第六話:闇のココロ

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腕の中のシンとマコトさんをぎゅっと抱きしめた。 「……思い出さない方が良かったのかな」 人には忘れた方が楽な過去もある。 私でさえ、父のことは忘れるというよりも消したいくらいの過去だ。 「ごめんね……シン、マコトさん」 「――……百合音、さん?」 ゆっくりと目を開けたのはマコトさんで、私はよく分からないぐちゃぐちゃの感情に涙が溢れてしまった。 もちろんこの状況が理解出来ないマコトさんだったけれど、しばらくして「思い出して良かったです。ありがとう百合音さん」と呟いて、再び気を失なってしまった。 冴子さんが言うには、シンと記憶が統合し始めているのかもしれない、とのことで、私は涙が止まらなくなった。 もしかしたら、あれがシンに会えた最後の時だったのかと、後悔や不安に胸が押し潰されそうだったから……。
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