最終話:光を求めて

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季節が巡り、再び暑い夏がやって来た頃、私は忙しく駆け回っていた。 各セクションで夏のイベントを開催するため、確認作業に追われているのだ。 「はい高月です。はい……はい、分かりましたすぐ向かいます」 スマホを耳から放し、遊園地担当者に花火の最終確認をしたあと、その足で温泉施設へと急いだ。 向かっている最中も「高月さん」「高月さん」と次々に声を掛けられる。 私がこのトレジャーランドの副社長秘書として認識された証拠だと思い、煩わしさは少しも感じず、むしろやりがいを実感しているところだった。 「百合さん!」 「佳奈さん」 温泉施設で待っていたのは、私がこの仕事で初めて接したお客様の佳奈さんだった。 ご主人の形見の指輪を探した件以来、懇意にさせてもらっている。
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