最終話:光を求めて

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「ごめんなさい、忙しいでしょう?」 「いえ大丈夫です。今落ち着いたところですから」 そう言ってにこりと笑ってみせると、佳奈さんは安堵の表情を浮かべた。 そんな佳奈さんを誘って、温泉施設の休憩所で少しお茶をすることにした。 「どうぞ」 「ありがとう」 カップコーヒーを手渡すと、佳奈さんは両手で受け取ってぺこりと頭を下げた。 その左手薬指にはキラリと指輪が光っている。 「百合さんはもう随分と立派になったんですね。温泉の方に百合さんのお名前出したら慌てて連絡されたものだから驚いてしまって」 「あ、そうだったんですね」 「ええ。百合さんは元気でお仕事されてるかちょっと聞きたかっただけなのに」 クスリと笑った佳奈さんは相変わらず品の良さがにじみ出ていたけれど、どこか物悲しそうな雰囲気を感じた。
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