最終話:光を求めて

4/15
前へ
/195ページ
次へ
形見の指輪が見つかった時はとても幸せそうに見えたのに、やはりご主人を亡くされたことは何年も引きずってしまうものなのだろうか。 「……百合さんは好きな男性いらっしゃるでしょう?」 「え、あ……はい」 唐突な質問に驚いてしまったけれど、きっと佳奈さんの物悲しさはそこから来るものだと思い、すぐに返事をした。 佳奈さんはコーヒーのカップを見つめながら、意を決したようにその口を開いた。 「私……主人以外に好きな人が出来てしまったんです」 さすがにこの答えには驚きを隠せなかった。 亡くなった今もずっとご主人を愛されているのだと思って、憧れすら抱いていたから。 でも、そんなのは他人の都合の良い妄想なのだろう。 実際に主人を亡くして身も心も疲れきっていたら、誰かに甘えたくなる気持ちも分からないほど子どもじゃない。
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!

374人が本棚に入れています
本棚に追加