最終話:光を求めて

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「私どうしたらいいか分からなくなってそれで……ここへ、主人との思い出の場所へ来たんです」 思い出深い場所は、薄れていた記憶と共に当時の感情を蘇らせる。 佳奈さんはここへ来てご主人への愛を確認したかったのかもしれない。 「……どうでした?」 「やっぱり私はまだ主人のことを愛しています。だけど、彼のことも……。こんなの許されませんよね」 「それでいいんじゃないですか?」 「えっ?」 「佳奈さんの人生はまだ何十年もあるんです。亡くなった人に縛られて生きることはありません。忘れなければそれでいいんじゃないですか?」 私の言葉に佳奈さんはボロボロと涙を溢した。 偉そうなことを言ったけれど、私自身母親を亡くして以来、彼女を死に追いやったと勝手に父親を恨んで生きてきた。 でも、一方的な考えは間違っているとシンに教えられてから、少しは成長したのかもしれない。
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