最終話:光を求めて

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そう言えば去年、初日の花火をシンと一緒に見て色んな感情に振り回されたな、なんて良い思い出話だ。 「百合音さん、今日の花火一緒に見ましょう」 「はい」 にこりと笑顔を返すと、マコトさんの手のひらが頭にポンと乗せられた。 最近忙しくてダイニングルームできちんと食事なんて出来なかったから、花火をおかずに久々のホテル食を楽しもう。 そう思いながら、再び仕事へと戻った。 ***** 花火が始まる少し前、なぜか部屋に届けられた浴衣をあれよあれよと言う間に着せられて、鏡の前でくるりと回ってみた。 浴衣なんて小学生の時に母に着せてもらって以来、一度も袖を通さなかった。 大人になって着てみると、自分でも少し色気を感じて気恥ずかしくなったけれど、そろそろ行かないと花火が始まってしまうため急いで部屋をあとにした。
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