最終話:光を求めて

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その表情に私の目頭が熱くなる。 「……シン?」 「二度とマコトと間違えるな、って言わなかったか?」 「シンっ!」 掴まれていた腕を振りほどき、思いきりシンに抱きついた。 「危ないだろ」 「シン!」 「せっかくの浴衣が崩れるぞ?」 「シン」 「聞こえてる」 「……シンだぁ」 シンに会うのは一ヶ月ぶりで、嬉しさに涙が溢れてきた。 結局、全てを思い出したシンとマコトさんだったけれど、そう簡単に人格障害は治らず、こうして今も一つの体に二つの心が存在している。 ただ、以前のようにシンがほとんど表に出てマコトさんが数ヵ月に一回しか出ない、ということはなくなり、主人格であるマコトさんの心が疲れてしまった時にシンが現れるようになった。 私が触れることで人格交代が起こるあの不思議な現象もなくなってしまった。
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