最終話:光を求めて

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抱きつくと言うよりもしがみつく、と言った方が正しいような私の背中に、シンの腕が回される。 「百合……いい子にしてたか?」 「してた」 「マコトと浮気してないだろうな」 「ふふ、どうかな」 マコトさんが出ている間にシンが“視える”こともなくなったらしく、シンは現れる度にこの質問をしてくる。 ちょっとした嫉妬のような気がして、シンには悪いけれど嬉しくなってしまう。 「今回は出てくるの早かったね。しかも花火の日になんてすごい偶然――」 「マコトが譲ってくれたらしい」 「え?」 私から少し体を離したシンがメモ紙を私の目の前に掲げた。 そこにはマコトさんの字で、 “今日は夏の花火初日だから代わってあげる。 最近百合音さん、忙しくて食べる暇も寝る暇も惜しんでいるみたいだから、少しゆっくりさせてあげて。 百合音さんに浴衣を用意した僕に感謝しなよ?” と書かれてあった。
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