第一話:彼の秘密

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これも一種の多重人格ですね、と笑う冴子さんだけれど私は全く笑えない。 もう何がなんだか分からない、ただそれだけなのだ。 「混乱されているとは思うのですが、百合さんはすでにマコトともシンとも遭遇しているはずなので理解は出来るかと」 マコト、シン。 画面の写真を見比べながら、彼に会った時のことを思い返してみる。 昨日ぶつかって書類をぶちまけた時、サッと拾ってくれたのが、マコト。 そのあと「どけ」と嘲笑ったのは、シン。 そしてさっき私のことをナンパ扱いしたのもシンで、覚えててくれたのがマコト。 そう考えると、確かに彼の態度が突然一変したのも納得は出来る。 出来るけれど……、 「受け入れ難い、ですか?」 「……ハイ」 「まぁそれが普通の人の反応です」 そう言って眉を下げた冴子さんがパソコンを再び操作した。
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