第一話:彼の秘密

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ズラリと沢山のパソコンが並び、その前に座って真剣に画面を見つめる人々。 そのせいで、パソコンのマウスをクリックする音やキーボードを叩く音が響くこの部屋。 ここはネットカフェ……ではなく、ネーミングこそ希望に満ち溢れているけれど実際にはそうでもない、職業安定所……通称ハローワーク。 求職者たちが集まる、決して楽しいとは言えない場所。 「高月(タカツキ)さん、どうぞ」 「はい」 名前を呼ばれて出されたプリントの束に手を伸ばす。 それは、パソコンで調べた求人情報が記載されたプリントで、希望するところがあれば連絡も取ってもらえる。 しかし、今回はあまり条件が合うものがなく、またしばらく求職活動をする日が続きそうだと肩を落としながらハローワークをあとにした。
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