第一話:彼の秘密

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映し出されたのは家具が白で統一されたどこかの部屋。 「……あ」 そこには彼、宝来真がいた。 クローゼットを開け、中からタータンチェックのシャツとジーンズを取り出し着替えを始めている。 「百合さんに会うまではシンでしたから、マコトにはあの服装が気に入らないのでしょう」 そう言われれば初めて会った時、彼の雰囲気に身に付けている装飾品が合っていないなと思ったような気がする。 それはシンの格好をしたマコトだったから? 「うーん」 「すぐに受け入れられないのは分かります」 「でも……どうして私にこんな話を?冴子さんにとって宝来真は患者さんであって――」 「はい。本来は患者の情報を他人に漏らすなどあってはならないことです」 じゃあどうして、と言おうとした私の手を冴子さんがスッと取った。 「百合さん、あなたに協力して欲しいから、です」
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