第一話:彼の秘密

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冴子さんの真剣な眼差しにゴクリと喉が鳴る。 「主人格であるマコトは基本的にほとんど現れることがありません。現れるとしても数ヶ月に一回程度」 「そ、そうなんですか?」 「それが……、マコトは昨日現れたのに今日も現れた。宝来真が解離性同一性障害になってから初めてのことです」 初めてのこと。 それが私とどう関係があるのだろうと首を傾げると、冴子さんが私の手を自分の腕に当てて見上げた。 「あなたが触れたことで人格が交代した」 「――っ」 「原因は分かりませんが人格の交代が百合さんをきっかけに起こった、と私は見ています」 言われてみれば、確かに彼に触れた時にバチッと弾かれる感じがして、それから彼の態度が一変した。 冴子さんから放された自分の手をくるくると見つめてみるけれど、特に何かあるわけでもない。
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