第一話:彼の秘密

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何だか恐ろしくなって身震いすると、冴子さんが落ち着かせるように私の手を握った。 「私はシンと共にこの障害について研究をしているんです」 「……シン、と?」 「はい。シンはなぜ自分が生まれたのか、どうしてマコトと交代するのか、興味があるんです。だからこうしてカメラを設置して、人格の違いや交代のタイミングなどを資料として録画しています」 研究、資料、と言う言葉に気後れしそうになるけれど、冴子さんの真剣な眼差しにしっかり耳を傾けなければと姿勢を正した。 「あなたが触れることで本当に人格交代が起こるのだとしたら。その原因と共に、宝来真の傍で解離性同一性障害の研究をさせてはもらえませんか?」 即答するようなことじゃない。 それはもちろん分かっているけれど、私が導かれるように彼を探しに来たのはきっと……。 「分かりました。私で良ければ協力させて下さい」
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