第一話:彼の秘密

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マコトさんは道端で書類を拾ってくれた時と変わらず、本当に優しい人なのだと胸が和らぐと同時に、どうしてこの人が多重人格に?と疑問も浮かんだ。 きっとその答えは冴子さんの研究に協力して、マコトさんの傍に居ればいずれ分かるのかもしれない。 「ね、冴子さんダメかな?」 「私としては百合さんが手伝ってくれるのならもちろん助かるし、マコトがそう思うのならいいんじゃない?」 「良かった。百合音さん、どうですか?」 改めて話を振られ、私は迷うことなく「有り難く働かせて頂きます」と答えた。 無職で困っていた私には本当に有り難い話だし、冴子さんの研究に協力することでマコトさんの障害が治るかもしれないのなら。 と、この時の私は彼の障害について軽く考え過ぎていたのだ、とのちに後悔すると共に“宝来真”と言う人物に激しく惹かれてしまうのだった――。
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