第二話:冷たい男

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豪華なホテルの最上階。 私には広すぎるその一室に、持ってきていた鞄をドサリと下ろした。 つい先ほどの夕食で、宝来真の秘書兼冴子さんのアシスタントという仕事を与えてもらい、もう遅いからと今晩の寝床まで貸してもらえた私は、まだ夢心地でふわふわとしていた。 「……ほんとにいいのかな」 昨日と今日でこうも人生が変わってしまうと、嬉しい反面やはり不安も付き纏う。 好きなように使ってと用意された部屋でそわそわと落ち着かず腕を擦っていると、コンコンとドアがノックされて冴子さんが顔を出した。 「百合さんちょっといいですか?」 「あ、はい」 慌てて冴子さんの元に駆け寄ろうとすると、そのままで大丈夫だと言うように手のひらを見せられ、私はその場に立ち止まる。 「さっきはマコトが話を強引に進めてしまいましたが、百合さんは研究に協力するだけでなく……本当に副社長の秘書も引き受けて下さるんですか?」
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