第二話:冷たい男

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私の不安とほぼ真逆の意味で不安を抱いていたらしい冴子さんは、形の良い眉を下げて私の様子を伺っている。 「私こそ勝手に了承してしまって……もしかして研究がしにくくなりますか?」 「いえとんでもない。副社長の秘書をやって下さればそれだけ自然に傍に居ることが出来ますから、より研究材料も集めやすくなります」 「そうですか、良かった」 どうやら冴子さん的にも有り難い状況になったようで一安心だ。 ホッとしたような笑顔を浮かべていた冴子さんが突然キッと表情を固くし、少し声のトーンを抑えて私の耳元で呟いた。 「今からここにマコトが来ます。早速ですが上手くマコトに触れてもらえますか?」 「!」 私が宝来真に触れる。 それは人格交代のきっかけかもしれない。 その考えを今ここで実験してみようということなのだろうか。
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