第二話:冷たい男

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「シン!この人があなたが昨日言っていた“強制的に交代した瞬間に目の前に居た女”の、百合さんよ。今も強制的に出てきたんでしょ?」 冴子さんの言葉に、宝来真は眉を寄せ目を細めて私をジッと見つめた。 その顔の近さに胸がドキドキと反応してしまう。 「どうやら百合さんがあなたに触れることで、人格交代が強制的に行われるようなの」 「……へぇ」 「だから私たちの研究に協力してくれるよう頼んだわ。これで材料も集めやすくなるでしょう?」 宝来真の機嫌を取るかのように冴子さんが言葉を連ねる。 ずっと一緒にいる冴子さんですら、この別人格であるシンには表情を堅くしていた。 「じゃあ研究だけ協力させればいいだろう?なぜ秘書の真似事までさせるんだ。とても冴子の代わりが務まるとは思えないが」 そう言って私を見下すように腕を組み、右の口角を上げた宝来真に私の我慢もプチッと切れてしまった。
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