第二話:冷たい男

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「人が黙って聞いてれば……言いたい放題言ってくれるじゃない」 「は?」 「触るよ!」 バッと手のひらを宝来真の顔の前に突き出して睨みつける。 私には武器がある。 “強制的に行われる”と言う人格交代が、私のこの手で簡単に出来るのだ。 さすがに怯んだのか、宝来真は体を仰け反らせて一歩後ろに下がった。 「私は“アナタ”に言われて秘書をやるの。取り消しなんて恥ずかしい真似しないで」 「それは俺じゃない」 「私は“マコトですよろしく”って、この顔に言われたんですけど」 「お前っ」 「“お前”じゃない、さっき自己紹介したでしょ?もう忘れたの?頭悪いんじゃない?」 一度切れた私は自分でも手が付けられない。 普段では考えられないくらいにスラスラと言葉が口を飛び出して行く。 冴子さんの言葉を借りるなら、“これも一種の二重人格”かもしれない。
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