第二話:冷たい男

7/40
前へ
/195ページ
次へ
そんな私たちのやり取りを呆気に取られて見ていた冴子さんがプッと吹き出した。 「すごいわ百合さん。シンを黙らせるなんて……私初めて見ました」 「そうなんですか?じゃあ相当苦労してるんですね」 「オイっ」 「だから……私は“お前”でも“オイ”でもないって言ってんでしょ?いい加減――」 「百合っ!」 チッという舌打ちと共に私の名前を呼ぶことで言葉を遮った宝来真に、バクンッと胸が飛び跳ねた。 「……あ、アレ?」 無意識だっただろうけれど、私の手首を掴んだ宝来真に人格交代が起こらない。 静電気のようなあのバチッとする衝撃もない。 「もしかして……」 「俺はお前に触っても交代はしないらしいな」 「う、うそ!」 私の手首を掴んでいる彼の手首を反対の手で掴み返すけれど、交代は起こらない。 「……な、何で」 「まだ材料が足りないのではっきりしたことは言えませんが、人格交代が起こってしばらくは強制的にも交代は出来ないのかもしれません」
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!

374人が本棚に入れています
本棚に追加