第二話:冷たい男

9/40
前へ
/195ページ
次へ
扉が閉まる音と共に私はへなへなと床に崩れ落ちる。 「百合さん!」 冴子さんが心配して駆け寄ってくれたけれど、「大丈夫、緊張の糸が切れただけです」と言って何とか立ち上がった。 そして自分の手のひらをじっと見る。 「……ほんとに人格交代が起こった」 にわかには信じ難いけれど、こうして目の当たりにし、冴子さんやシンにも言われると自覚が湧いてくる。 ただ、なぜ私にそんな能力的なものがあるのかは分からないけれど。 「百合さん、シンが伝言を残して行きましたので少しよろしいですか?」 じっと手を見つめる私に冴子さんが椅子を勧めてきたので頷きながら腰を下ろす。 すると、冴子さんはノートパソコンをテーブルに乗せ、カタカタとキーを打ち鳴らした。 「やはり百合さんが触れることで人格交代が起こることは事実のようです。ただ、先ほどのように交代が起こらない場合もあるようなので、何が例外なのか……などを含めて今後また実験させて頂きます」
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!

374人が本棚に入れています
本棚に追加