第二話:冷たい男

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確かに実験でも何でもして、人格交代が起こる時と起こらない時をはっきりさせておかないと、シンを相手にする私の身の安全にも関わる。 「それから、副社長の秘書の件ですが、シンが言っていた通りお願いします。ただし、注意事項が何点か……」 そう言って、冴子さんがノートパソコンをくるりと私の方に向けた。 「マコトが表に出ている間、シンにはその行動が映像として視えています」 「見える?」 「はい。マコトが見ていること聞いていることが、テレビを見ているように視えるのだそうです。ただその逆に、シンが表に出ている時、マコトはその間の出来事が記憶喪失のように抜け落ちてしまいます」 そう説明されて、あぁなるほどと納得する事実を思い出した。 私がマコトと会話したはずの秘書の件を、表に出ていなかったシンは知っていた。 逆に、マコトとぶつかったのは“昨日の出来事”だったのに、シンから交代して現れたマコトは“さっき”と今日の出来事のように話した。
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