第二話:冷たい男

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「ですので、万が一マコトが仕事中に現れてしまった場合は、現在置かれている状況を説明してあげて下さい」 なるほど、と納得してパソコンの画面から顔を上げると、冴子さんは眉を下げて悲しそうな表情を見せた。 「アルコールに酔って記憶を飛ばすのと同じだから大丈夫、とマコトは笑って聞いてくれます」 「……酔ったのと同じ?」 「マコトが表に出ていない期間は二、三ヶ月もあります。それなのに、酔って記憶を飛ばすのと同じだなんて有り得ないですよね。でも、マコトは……私を気遣って冗談のように笑うんです」 そう言って、キュッと口をつぐんだ冴子さんは、医者として自責の念にかられているのかもしれない。 医者としてマコトの障害を治してあげたい……でも、医者として研究もしたい。 その狭間で苦しんでいるのだろう。 「冴子さん!私頑張りますから。いっぱい協力しますから!」
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