第二話:冷たい男

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私に出来ることは、冴子さんに協力して人格障害の研究を進めること。 そうすればきっと、治療にも繋がるのだと信じて。 「ありがとうございます」 うっすらと涙を浮かべた冴子さんに、私はにこりと笑顔を返した。 それから、と気持ちを切り替えたらしい冴子さんが再び話を続ける。 「仕事中は“副社長”と肩書きで呼ぶようにして下さい。宝来真に人格障害がある事実はご家族しか知らないことですので」 「はい」 確かに、“副社長”と呼んでいれば宝来真に人格交代が起こっても、周りは態度が変わったな、くらいにしか思わないだろう。 実際私もそうだったし。 それくらい、人格障害はメジャーな障害ではないのだ。 「それと」 まだあるの?と言う顔で冴子さんを見ると、冴子さんはフフッと笑い、ノートパソコンを片付けながら立ち上がった。
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