第二話:冷たい男

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「明日、トレジャーランドの案内をシン自らするそうですので、十時には直通エレベーターの前でお待ちくださいね」 「えっ!?さ、冴子さんは……」 「私は明日本業の方で外出しなければなりませんので」 頑張ってください、と意味ありげに笑って去って行った冴子さんの残像に、私はいつまでも手を伸ばしていた――。 ***** 翌日。 あまり眠れなかった目を擦りながら、いつの間にか用意されていたサンドウィッチを頬張り、オレンジ色のスムージーを流し込む。 「ん……美味しい」 さすがホテルの朝食だと思いつつ、時計に視線を移してため息。 あと一時間で地獄のツアーが始まってしまう。 あんなにも簡単に副社長の秘書をやるだなんて言うんじゃなかった……と後悔したってもう遅い。 一時間後にはあのやっかいなシンをコンダクターに、ツアーを回らなくてはならない。
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