第二話:冷たい男

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***** 重い足を引きずりながら、冴子さんに言われたエレベーターの前に辿り着いた。 まだシンは来ていないようでホッと胸を撫で下ろす。 もし私の方があとに来ようものなら、朝から何を言われたか分かったものじゃない。 ピカピカに磨かれたエレベーターの扉を鏡代わりに、とりあえず身だしなみをチェックする。 昨日と同じ、サマーニットにパンツを合わせたラフなスタイルだ。 もちろん部屋に帰っていればスーツで来たけれど、これしかないのだから仕方ない。 シンに一言二言チクリと言われることは覚悟して、それでもせめて、と髪は後ろで一つに結ってきた。 頑張れ頑張れ、と扉に写る自分を励ましてくるりと振り返る。 「…………」 通路の奥から歩いてくる人影に目を凝らし、驚きに声を失なった。 歩いてきたのは紛れもなくシン。 不機嫌そうに眉を寄せて颯爽と歩く姿は、テレビを通して見たシンそのもの。
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