第二話:冷たい男

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ただ、驚いたのはそこじゃない。 「……シン、その格好」 そう。 堅苦しいスーツ姿ではなく、VネックのTシャツにチノパン、そして足下はデッキシューズという、私と同じくラフな格好だったからだ。 そんな私の反応に、シンは更に深く眉を寄せて呟いた。 「今日はオフだ。俺が何を着ようと文句を言われる筋合いはない」 「お、お休みだったの?」 それは初耳。 てっきりシンは仕事の一貫として仕方なく私を案内してくれるものだと思っていたから、まさか休みを返上してまで付き合ってくれるとは。 「そうまでしないとすぐに使えそうにないポンコツ感が漂ってるからな」 しかし、そう鼻で笑われ、一瞬でも本当は優しい人なのかも、と思ってしまった自分を呪いたくなる。 がっくりと肩を落としつつエレベーターのボタンを押すと、程なくしてポーンという音と共にエレベーターが到着した。
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