第二話:冷たい男

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エレベーターに乗り込み、開閉ボタンの“開”を押しながらも念のために扉にも手を添える。 シンが挟まれでもしたら、私は即刻首だろう。 「……フッ」 私のあとに続いてエレベーターに乗り込んできたシンが、右の口角を上げて突然笑い声を漏らした。 「意外に使えそうだな」 「はい?」 何をもって使えそうだと判断されたのかは分からないけれど、シンの眉間に寄っていたシワがなくなったことに、少し安心している自分がいた。 シンはマコトさんと違って、よく眉を寄せている。 もちろん不機嫌だからそうしている時もあるだろうけど、私が思うにたぶんあれは癖だ。 「……何だ」 「いえ」 私がジッと見ていたことが不快だったのか、シンは再びキュッと眉を寄せてしまった。 そんな険しい表情をしているから、きっとシンの周りはピリッと張り詰めた空気が漂うのだろう。
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