第二話:冷たい男

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現に、私が案内してもらう先々で、シンを見た従業員たちが顔を引きつらせて姿勢を正した。 皆シンの機嫌を窺うかのように言葉を選んで話している。 「副社長、先日いらっしゃった岡本様の件ですが、今お話してもよろしいでしょうか?」 緊張した面持ちでそうシンに向かって話し掛けてきた男性に対し、シンは眉を寄せたまま短く「あぁ」と返事をしたあと、私に視線を投げた。 「しばらく時間潰せるな?」 「……はい」 肯定以外許さないような問い掛けに私が返事を返すと、シンはその男性と共にどこかへ行ってしまった。 ポツンと残されてしまった私は、とりあえず辺りを見渡す。 ここはトレジャーランドの一角である温泉施設。 足湯から露天風呂まで宿泊しなくても利用出来るとあって、日帰り旅行者や付近に住む高齢者などの利用が多いようだ。
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