第二話:冷たい男

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時間を潰すと言っても温泉に入るわけにもいかず、椅子やテーブルなどが設置してある休憩所らしき場所へ足を運んだ。 「?」 そこでは一人の女性が屈んだり中腰になったりしながら、キョロキョロと辺りを見渡していた。 明らかに何かを探しているようだ。 「落とし物ですか?」 私がその女性の背後から声を掛けると、女性はビクッと肩を揺らしながらも振り返った。 年は私よりも少し上くらいの優しそうな雰囲気をした女性だ。 「あ、はい……指輪を……落としてしまったみたいで」 眉を下げ、胸元をキュッと掴んだ彼女は今にも泣き出してしまいそうな表情をしている。 きっと大切な指輪なのだろう。 「私も探しますよ」 「あ、でも……」 「時間が空いてしまったので気になさらないでください」 私がにこりと笑って見せると、彼女は「ありがとうございます」と頭を下げた。
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