第二話:冷たい男

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「この辺りで落とされたんですか?」 「……それが……どこで落としてしまったのか分からないんです。あ、でも、この温泉施設で落としたのは間違いないんですけど」 それは大変だ。 トレジャーランドの一角とは言え、温泉施設もそれなりに広い。 そこを全部探すとなると、かなり労力のかかる作業になる。 しかも、探し物は小さな指輪。 「……すみません」 大変な作業に巻き込んでしまった罪悪感からか、彼女がしきりに謝る。 「いえいえ、ほんと気にしないでください。私“暇人”なんです」 「……でも」 「指輪ってもしかして結婚指輪ですか?」 まだ申し訳なさそうに眉を下げる彼女の気を逸らしたくて、指輪を探しながら話題をさりげなく変えた。 すると、彼女はうるっと瞳に涙を溜めてコクンと頷いた。
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