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「……あっ」
宙を舞う書類を目で追っていると、私がぶつかってしまったらしい男性が、腕を擦りながらその書類を拾ってくれていた。
ボーッとしていた私も慌てて書類を拾うためにしゃがむ。
「す、すみません!大丈夫でしたか?」
「……あ、はい。僕の方こそ……前を見ていなかったので」
書類を拾いながら顔を上げた男性が、申し訳なさそうに眉を下げた。
書類へ伸ばすその手にはゴツめの指輪やブレスレットが嵌められていて、優しそうな雰囲気の彼には似つかわしくない装飾品だな、と少し気になった。
「これで全部……ですかね」
「あ、はい、そうみたいですね。拾って頂いてありがとうございます」
ペコリと頭を下げて顔を上げると、彼は照れたようにふわりと微笑んだ。
その笑顔にドキリとしながらも、彼から書類を受け取ろうと手を伸ばした時だった。
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