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「だから指輪を探してあげたいって――」
「このポンコツ馬鹿が。そんなのは俺たちの仕事じゃない」
「そうだけどっ」
「行くぞ。次は映画館を案内する」
「ちょっと待っ――」
シンは伸ばしかけた私の手をサッと避けると、あの冷たい視線で私を射ぬいた。
「俺の秘書をやると言ったからには完璧にこなしてもらう。そのために俺は休みを返上してお前にこの施設を案内してやってるんだ」
「…………」
言い返したいけど言い返せない。
シンの言うことは最もだと思うから。
無職の私に仕事を与えてくれ、業務がしやすいようにと自ら説明して回ってくれているシンに、私の要望はわがままだと分かっている。
「行くぞ」
無言の私に構うことなく背を向けて歩き出したシン。
やっぱり彼は冷たい男だ。
シンの言うことは正しい。
でも、人には感情があってそれが見過ごせない感情な時もある。
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