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それが理解出来ないほど、シンは冷たい男なのかもしれない。
「分かりました……今はちゃんと行きます。でも、これが終わったら指輪を探そうが私の自由ですよね?」
私の言葉に、シンは背を向けたまま答えてはくれない。
でも、“ダメだ”とも言われていないので、それがシンなりの答えなのかもしれない。
そう勝手に解釈することにして、私はそのあとも必死でシンの案内について回った。
*****
「――ないなぁ」
懐中電灯を片手に温泉施設内を歩き回る私。
あれからシンの地獄ツアーは夕方まで続き、解放された私はずっと指輪を探していた。
けれど、全く見付かる気配もなく、時間だけが刻々と過ぎていく。
「……どうしよう」
あんなに意気込んで佳奈さんに指輪を届けると言ってしまったのに、やっぱり見付かりませんでした、ではただの馬鹿だ。
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