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ポンコツ馬鹿。
シンの言葉が頭に反芻する。
本当にその通りだ。
指輪が見付かる保証もないのに、あんな大口を叩いた私は正真正銘ポンコツ馬鹿だ。
……でも。
佳奈さんのために指輪を探し出してあげたいと思った気持ちは、ポンコツでも馬鹿でもないと思う。
その自分の気持ちを信じて、私は再び懐中電灯を握りしめて指輪探しを再開した。
「……ひゃっ!」
指輪探しに集中していた私は、懐中電灯の明かりが一瞬捉えた人影に驚いて声を上げた。
恐る恐る明かりを人影に向けると、
「シン!」
そこには眉を寄せて腕を組んで立っているシンがいた。
とりあえず幽霊の類いではなかったことに安堵して、シンに駆け寄る。
「急に現れるからびっくりした」
「驚いているのは俺の方だ」
暗がりでチラチラと光る懐中電灯の明かりが怖かったのだろうかと首を傾げると、シンが眉を上げ盛大なため息を吐いた。
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