第二話:冷たい男

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眉を寄せて反論する私に、シンがハァと呆れたようにため息を吐いた。 「その彼女は指輪をネックレスにしていたんだろ?だったら、チェーンが切れて指輪が落ちたことに気付かない場所へ転がった、と考えるのが自然だ」 「……あ」 そうか。 この温泉施設はほとんどが板の間で作られている。 何らかの拍子にチェーンが切れたとして、指輪が床に落ちた音が少しは聞こえるはずだ。 それに全く気付かず、休憩所で腰を下ろした時にチェーンが襟元に引っ掛かっていて指輪がない、とそこで初めて気付いたのだと佳奈さんは言っていた。 「それに本日の営業は終了した」 「?」 「つまり、すでに全体的な清掃が終了したということだ。それが意味するのは何だ?考えてみろ」 温泉施設の営業は終了していて、掃除も終わっている。 ……ということは……、 「あっ!」 「やっと分かったか、ポンコツ馬鹿が」
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