第二話:冷たい男

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懐中電灯の明かりをある一点に向け、そこにしゃがみ込む。 「――あった!!」 明かりの中、キラリと光る指輪を手にして歓喜の声を上げた。 指輪はギャラリーの端に置かれた観葉植物の陰にひっそりと身を潜めていた。 「あった!あったよシン!」 嬉しくて嬉しくて、指輪を見せながら駆け寄ると、シンはフッと右の口角を上げて笑った。 「お前がポンコツ馬鹿じゃなければもう少し早く見付けられたのにな」 「分かってたなら教えてくれたっていいのに」 「どれくらいポンコツなのか調査したまでだ」 なんてヒドい男……。 と思いつつも、結局は指輪の在りかを教えに来てくれたのだと分かり、胸が温かくなる。 「やはりここまで清掃が行き届いていないということか……。朝イチで説教だな」 と呟いた恐ろしい言葉は聞かなかったことにして、清掃担当者さんに心の中で謝罪した。 私のせいでごめんなさい、と。
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