第二話:冷たい男

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佳奈さんの形見の指輪を見つめて微笑んでいると、シンが「帰るぞ」と私の手首を引っ張った。 「か、帰るってどこに」 「ホテルに決まってるだろ」 「今日も泊めてくれるの?」 この時間じゃもちろんタクシーで帰る以外選択肢がなく、それは有り難い申し出だけれど。 カツカツと足音を響かせながら、シンは背中を向けたまま口を開いた。 「……ずっとあの部屋に居ればいい」 「えっ?」 「自宅から通うより楽だろう?」 「そうだけど、私ホテル代払えるほど余裕は――」 「あそこはホテルだが俺の家でもある。宿泊代は要らない」 何だろう……どうして急にそんな親切なことを言い出したのだろう。 シンの心境の変化についていけず躊躇っていると、歩みを止めたシンが少しだけ振り返った。 「高月百合音について調べた」 「……あ」 なるほど、と納得した。 私について調べたということは、父親を知らずに育った私が唯一の肉親であった母親を亡くし、現在一人で生活していることを知ったということなのだろう。
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