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バチッと静電気のように手が弾かれ、痛みに手を擦っていると、拾い上げた書類が再び宙を舞ってしまう。
「あぁっ」
慌ててしゃがんで書類を集めるけれど、彼は立ったまま動かない。
二度は拾ってくれないのか……とがっかりしながらも全て拾い上げて立ち上がると、彼は首を垂れたまま微動だにせず、どうしたのかと焦って声を掛ける。
「だ、大丈夫ですか?」
私の声で弾かれるように顔を上げた彼が私を見下ろす。
その眼がさっきとは違い、鋭く刺すように冷たいもので、沸き上がる恐怖感にゴクリと喉を鳴らした。
「あ、あの」
「……そこをどけ」
「えっ?」
「邪魔だ、と言っている。日本語が分からないのか?」
あまりのことに開いた口が塞がらず、どけと言われているのに体も動かない。
そんな私を見て彼はチッと舌打ちをすると、蔑むような視線を送りながら私の横を通り過ぎて行った。
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