第一話:彼の秘密

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バチッと静電気のように手が弾かれ、痛みに手を擦っていると、拾い上げた書類が再び宙を舞ってしまう。 「あぁっ」 慌ててしゃがんで書類を集めるけれど、彼は立ったまま動かない。 二度は拾ってくれないのか……とがっかりしながらも全て拾い上げて立ち上がると、彼は首を垂れたまま微動だにせず、どうしたのかと焦って声を掛ける。 「だ、大丈夫ですか?」 私の声で弾かれるように顔を上げた彼が私を見下ろす。 その眼がさっきとは違い、鋭く刺すように冷たいもので、沸き上がる恐怖感にゴクリと喉を鳴らした。 「あ、あの」 「……そこをどけ」 「えっ?」 「邪魔だ、と言っている。日本語が分からないのか?」 あまりのことに開いた口が塞がらず、どけと言われているのに体も動かない。 そんな私を見て彼はチッと舌打ちをすると、蔑むような視線を送りながら私の横を通り過ぎて行った。
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