第三話:置いてけぼりの想い

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「どうして撤去して欲しいのかスタッフに理由を聞いてこい。理由次第では考える、と伝えろ」 腕を組み、顎で「行け」と促すシンにハァとため息を吐きながら、渋々店内へと足を踏み入れた。 ファッションブランドの店に入るのは初めてでドキドキする。 もちろんお値打ちなファッションブランドの店には入ったことはあるけれど、こんな高級なブランドは初めてだ。 チラリと見えたプライスカードの金額を見て目眩がする。 あのカットソー一枚で、普段私が買っている服が三着は買えてしまうから。 あぁ……未知の世界、なんて思っていると、店員さんが私に目を合わせ「いらっしゃいませ」と近付いてきた。 私はペコと頭を下げ、先日出来上がった名刺を手渡しながら挨拶をする。 「お疲れさまです。高月と申します。副社長の代理で参りました。ベンチ撤去の件でお話伺えますか?」 すると、名刺を手にした彼女が大きく目を見開き、「店長」と足早に店の奥へ消えて行った。
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