第三話:置いてけぼりの想い

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男性はいつも決まって土日の正午を過ぎた辺りから夕方、遅い時は閉店するギリギリまでベンチに座って店内を見ているそうだ。 あまりに気持ち悪く、一度岡田さんが「何かお探しですか」と声を掛けたそうだけど、男性は「気にしないでくれ」とだけ言って動いてはくれなかったらしい。 特に営業妨害をされているわけでもなく、撮影も本当にしているかどうか分からないため強く言えず、スタッフ一同気に病む日々を過ごし、今回要望書を提出したのだそうだ。 「……どうするの?」 「少し黙ってろ」 スタッフの気持ちを思うと黙っていられずシンを急かすけれど、シンはジッと男性と店内を見比べていた。 盗撮が分かれば現行犯で捕まえられる? でも、下着姿を撮っているわけでもないし、それって捕まえて何かの罪になるのだろうか? そんなことを考えていると、シンが組んでいた腕を外し、唇に指を押しあてた。
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