第三話:置いてけぼりの想い

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「あの彼女に何か関係があるんだろう」 「えっ」 「今鞄の売り場にいるショートカットの若いスタッフだ」 シンの言う場所を視線で辿ると、確かにショートカットの女性スタッフがそこにはいた。 「関係があるってなんで分かるの?」 「彼の視線がずっと彼女を追っているからだ」 なるほど、と思うと同時にシンって凄いなと少し尊敬した。 私なんて岡田さんの話を聞いて、ただ腸が煮えくりかえっていただけで何も行動に移せなかったのに、シンは冷静に事態を把握しようとしていた。 「どうして彼女のこと見てるんだろ?」 「それを聞きに行くのが百合の仕事だ」 「えー……」 私の不服は少しも聞いてもらえず、それどころか私の背中を突き飛ばして男性の元へ追いやるシンは冷酷非道を通り越して“鬼”だと思った。
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