第三話:置いてけぼりの想い

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シンが連れて来た先はモール内にある小会議室で、話をするにはもってこいの場所だった。 「そっちの兄ちゃんは?」 「副社長です」 「おぉ……こんな若いのか」 会議室に入るなり設置してあった椅子に腰掛け、ぶしつけに質問を投げる彼にシンが切れないかと冷や冷やする。 けれど、シンはさすが副社長だけあって特に苛立った様子も見せず、私に話を切り出すよう指示した。 「あの……あなたは」 「俺?俺は田辺(タナベ)」 「福原美咲(フクハラミサキ)さんの父親ですか」 「なんだ、調べはついてるんじゃねぇか」 フンッと鼻で笑う田辺さんだけれど、私には初耳の名前に眉をしかめてシンを見る。 すると、シンは呆れたようにハァとため息を吐いたあと、ジェスチャーで髪の毛を表した。 ……短い、髪? あ、そうか。 あのお店のショートカットの店員さんが福原美咲さんなのか。
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